「覚悟のススメ」のキャラ秘話に渡辺航が爆笑、板垣巴留らは即興キャラ披露
週刊少年チャンピオン(秋田書店)の創刊記念日である7月15日、東京・秋葉原UDXで行われた「週刊少年チャンピオン 創刊50周年大感謝祭」にて、「バキ」シリーズの板垣恵介、「弱虫ペダル」の渡辺航、「覚悟のススメ」の山口貴由のトークショーが実施された。
このトークショーは「キャラクター」をテーマとし、まずは「キャラクター誕生秘話」についてトークを展開。板垣からは「刃牙」シリーズの範馬刃牙、そして烈海王について語られる。刃牙について板垣は「アクの強いキャラクターは好きだし得意だったんだけど、そのままでは作品は売れない。女の子のようなきれいな顔のキャラがいなければ売れないという結論に達して、当時きれいな女の子を描いてたおおた慶文さんっていうイラストレーターの模写から始まって刃牙の顔が生まれたんだよ」と語る。これを「商売上の戦略」と明言した板垣に対し、司会の天津向は「板垣先生って『俺が描きたいものがみんな売れるものなんだ』って思ってそうなイメージでした」と、そのバランス感覚に驚いていた。
一方の烈海王に関しては「台湾に行ったときに、街を歩いてたら(看板などが)全部漢字じゃん? 漢字が10個あるとひとつは『烈』って文字が入る印象なんだよ。博物館に行ったときにも、台湾のために勇敢に戦った戦士のことが『烈士』と書かれてたし。そこで『これは讃えられる文字なんだな』と思って漢和辞典で調べたら「烈」は「甚だしい」という意味だと知った。そこで『甚だしい』ってことについて考えて初めて、ブルース・リーやジャッキー・チェンではない、中国人のヒーロー像が浮かんだんだ」と語る。向が「漢字からインスピレーションが浮かんだんですね!」と言うと、板垣は「カッコいい話だろ?」とニヤリと笑ってみせた。
渡辺航は「弱虫ペダル」の小野田坂道に関して「僕は競争のときに譲っちゃうタイプだから、坂道にもそういう部分が欲しかった。ロードレースはエースを優勝させるためにほかの5人がアシストするスポーツで、僕はアシストの部分をマンガで描きたかったので、一歩下がる性格の坂道を通してそれが描けるなと思った。結果的に坂道が優勝してますけど」と解説。さらに「途中から読んだ人には『鳴子が主人公かと思った』って言われるんですよ。鳴子は真ん中にいようとするので。でもああいうキャラも置いときつつ、坂道を描くという作り方」とコメントした。
さらに渡辺は御堂筋翔について「ネームを描いてるときに『どんな奴が一番怖いかな』って考えたら『何を考えてるのかわからないのが一番怖い』っていう結論に行き着いた。そうなると『表情が読めない』っていうことで、ページをめくったところでお面みたいな顔が出てくるようにしようと。『ダメって言われるかな、気持ち悪すぎるかな』と思いつつ、担当の武川(新吾)さんに送ったら『いいよ』って言ってくれて。これがいいんだったら、『キモ! キモ!』とか言わせまーすって感じで、どんどん自由にやらせてもらいました」と述懐した。
続いて山口が「覚悟のススメ」のキャラを語る。主人公の葉隠覚悟の着る白ランについては、「最初はチャンピオンの不良のイメージで(黒い)学ランを着せてたんです。でも昔、ヤンキーとか暴走族が多い街に暮らしてて特攻服をいっぱい見てきたから、そのイメージが白ランに活きてると思う」と明かす。
ここで向が「さっき楽屋の打ち合わせで今みたいな話をしてたら、渡辺先生が山口先生にどうしても聞きたいことがあるっていう顔をしてましたよね」と渡辺に話を振る。渡辺は「『覚悟のススメ』1話に出てきた、戦術鬼の破夢子がすごすぎて。目玉がかわいくて、完全に主役級の目玉をしてるんですけど、めちゃくちゃ怖いんですよ! そのビジュアルをどうやって作ったのかなと思って」と、肥満体の敵キャラクターに対して興味津々な様子。これに山口が「当時同棲してた女の子が、お肉がいっぱいあったんですよ。その触感がすげえなと思ってたんで」と答えると、渡辺は大ウケ。向も「それが誕生秘話!?」とツッコんでいた。
続いてのテーマは「キャラクターの作り方」。まず板垣が「これは何度も話してるんだけど」と前置きしつつ「電車の中でずっと逆立ちしてる人を見たら、絶対に人に話すじゃないですか。なんで人に話すのかというと、『とてつもなく何か』な人だからじゃないですか。それが俺のキャラクターの作り方。口コミになることが前提」と力強くまとめる。
渡辺は「板垣先生の話は勉強になりますね。僕は複数の人間関係の中でキャラクターを作っていくんですよ。御堂筋のチームに石垣光太郎っていう3年生がいて、彼の場合であれば、1年生の御堂筋が支配するチームの3年生で元エースっていうポジションの奴は何を考えるだろうな、御堂筋の登場でいろんな負荷をかけられたんだろうな、っていうところからキャラクターを作ります」と、持論を展開した。
最後に山口が、「覚悟のススメ」のキャラクターが放つ特徴的なセリフについて、「葉隠覚悟であれば、人生は一度しかないと常に思っているから、そうすると言うことも普通の人とは変わってくると思うんですよね。『このあとお茶でもどうですか』じゃなくていきなりプロポーズするぐらいの。『今日で人生が終わるかもしれない』ってずっと思ってる奴って、常に人と違うことを言うと思うんですよ。頭で考えてセリフが出るんじゃなくて、僕がそういう心境になれれば(そういうセリフが出る)」と、キャラクターを極端な設定にすることでセリフが自然と出るという独自の手法を明かした。さらに「僕は『覚悟のススメ』の前に7回ぐらい連載してるんだけど、全部10回にたどり着かず打ち切りだったから、チャンピオンで連載を始めたときは『これが最後だ』っていう心境だった。9回ぐらいで終わるんだからと思って全力でいこうという自分の気持ちも(セリフに)乗っていると思う」ともコメント。三者三様のキャラクター理論を明かし、トークショーは終了した。
トークショーのあとは、「ハリガネサービス ACE」の荒達哉、「BEASTARS」の板垣巴留、「魔入りました!入間くん」の西修による、「即興キャラメイキング」が行われた。これは司会から出された人名に対し、「その人物がそれぞれのマンガに登場したら」という設定のもと、イラストをその場で描くというもの。1問目は司会の向、2問目はチャンピオン前編集長の沢というお題が出され、荒はバレーボール選手風に、板垣巴留は動物風に、西は使い魔風にと、それぞれのタッチでイラストを披露し、客席から喝采を浴びた。
最後にチャンピオン1年分を懸けて観客が参加した「創刊50周年チャンピオンクイズ」が行われ、「週刊少年チャンピオン 創刊50周年大感謝祭」は幕を閉じた。